読書感想文 〜ほしのの憂鬱〜

作品タイトル:涼宮ハルヒの憂鬱
涼宮ハルヒの溜息
涼宮ハルヒの退屈
涼宮ハルヒの消失
涼宮ハルヒの暴走
涼宮ハルヒの動揺
涼宮ハルヒの憤慨
涼宮ハルヒの陰謀
涼宮ハルヒの分裂




 はじめに断っておくが,これは決してレビューではなく,読書感想文である. 小中学校の夏休みの宿題として,別に書きたくもないのに原稿用紙に殴り書くことになっていたアレである. したがって,この文章は作品を紹介するためではなく,私の所感のままに書きつづらさせていただく. なんでそんなことしてるのかというと,自分でもよくわからないが,本を借りた際にそう言ってしまった手前, 自己満足のためにそうさせて頂きたい.

 昨今の異常気象のせいか,梅雨が明けたのが8月1日. それからわずかな期間しか経っていないというのに,既に世の中は猛暑を飛び越えて酷暑まっしぐら. そんな外部の困惑をよそに,私は入院生活=絶食生活27日目の日曜日を過ごしていた. 27日のうち,処置が何かあったのは数えるほどで,私に課せられた仕事の主たるものは,症状を悪化させないように 安静にして過ごすことである. 戦う相手は夏の日差しではなく,ひたすら存在する空腹と持て余した時間. ティータイムにお腹を満たしてくれるのは,上品な紅茶ではなく水とYahooのグルメレシピであり, かといって材料や作り方を真剣に眺めるわけではなく,見ているのはひたすらに写真だった. 今後も大きなイベントがあるわけでもなく,繰り返される何も起きない同じような毎日がやってくるで あろうことは明らかである. 6人という人数の多い一団がお見舞いにやってきたのは,そんな8月5日のことだった.

「ただの人間には興味ありません.この中に宇宙人,未来人,異世界人,超能力者がいたらあたしのところにいなさい.以上」 この全く自己紹介になっていない台詞で始まった主人公キョンの非日常的生活. 囲将会という一般社会から明らかに斜め後ろに外れてしまった一団の一人が持ってくるにふさわしい作品である. 落ち着いて考えてみて欲しい. 確かに一冊一冊は短い. 高々,250〜400Pしかないライトノベルだ. しかし,それを9冊ともなればかなりの分量である. 少なく見積もって2250P,持ってくるのに重くなかったのかととりあえず問いたい. さらにそれを入れている袋がなぜかマルイ.なぜマルイなのかと. 6人という無駄に多い人数で来たのも突っ込みどころだったのか,突っ込み待ちだったのか.

それはそれとして本の冊数が多いだけに,一週間ほどの暇をつぶすには便利な作品だった. ハルヒシリーズは,なかなかどうしてよく書けていた. 文章構成力,第一作目の条件設定が非常に巧妙だった. 特に,驚いたのは筆者の文章力で,長い修飾節が複数重ねられるにも関わらず,嫌味を感じず,なおかつ 歯切れよく読み進めることが出来る. 通常の物理法則を覆す事象が次々と起きるが,視点はあくまで普通の人なのがいい. 普通の人の視点でも十分内容が伝わってくるのは,一作目の条件設定の秀逸さ所以だろう. "涼宮ハルヒは,自分の思い通りの事柄を理屈ぬきで実現できる." これで全ての不可思議事象に理由をつけることに成功している. 実質,事柄について無理無理な説明を加えたり,問題を解決するのはその他の人物だが,その理屈が成り立つのは 上の大きな嘘によるもので,この嘘を真とすることで読者は安心して変な理屈を受け入れられる. どこまで狙ったのかわからないが,この設定は非常に見事だと思う. ハルヒ自身は自分の能力を知らないという意味で,なんとなく『サトラレ』を連想させられたのは私だけだろうか?

現実に起きないことを想像するのは面白い. もし自分に宝くじが当たったら,とか,すげースポーツが出来る人だったら,とか考えるだけなら自由だ. それがちょっとした勢いで行き過ぎたのがこの作品であり,自由な発想と夢の想像の面白さを垣間見せてくれているような気がする. 垣間見せてくれるだけならよかったが,あまりの作品の人気で長編と短編が交互に続く半端なシリーズ構成や 持ってこられた本の最後の涼宮ハルヒの分裂が次に続くで終わっているという見事な切れの悪さには, どこに向けていいのかわからない遺憾の意を表明せざるを得ない.

2250Pを読破し,宿題で出された時には絶対に進んで書くことなどなかった文章も書いてしまった2007年の夏. ハルヒよろしく,なんとかして自分の思い描いたことを実現できるのであれば,この2ヶ月の入院をなかったことにしろとは言わないにしても, 退院したあとに夏休みを作り直して欲しい. そんな妄想を思い描きつつ,怠惰な生活に刺激を与えてくれたおかしな一団に感謝感激したフリをしてこの筆を投げ捨てたいと思う.





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